サイト売買コラム
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ECサイト業界のM&A相場とは?メリットや事例も解説
この記事のポイント
ECサイトのM&Aは売り手にも買い手にもメリットがある。過去の成約事例を参考に売買ポイントをチェック!
2023.02.03
執筆者:和家 智也
コロナ禍の巣ごもり消費の増加や、キャッシュレス決済の普及によって盛り上がりを見せているEC業界。新たな事業者の参入の増加とともに、ECサイトのM&Aも増加しています。そこで本記事では、ECサイトのM&A相場やメリット、実際の成功事例について紹介していきます。
Contents
ECサイトの業界について
まずは、ECサイト業界の現状について確認しておきましょう。
経済産業省の「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、EC市場の規模は年々増加しており、2021年にはBtoCのEC市場規模が年間20兆円を超えるほどとなっています。
画像引用:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
また、BtoCビジネスのEC化率は8.78%に留まっていることから見ると、EC市場は今後も成長の余地があることが分かります。
ただし、コロナ禍でEC事業者が急速に増加したことを受けて、EC市場の競争はかなり激化している状況です。中には、EC事業での不採算を原因にM&Aを検討する業者も増加しています。
反対に、「既存事業とのシナジー効果を狙いたい」といった理由から、EC事業の買い手も増加しており、現在ECサイト業界ではM&Aが活発に行われています。
ECサイトのM&A相場
M&Aの買い手・売り手どちらの立場でも、最も気になるのが「いくらで売買できるのか」という点です。
ECサイトのM&A相場は、「月間営業利益の1~3年分」といわれています。仮に月間営業利益が30万円とした場合、360万~1,080万円の価格帯で取引される計算です。
ただし、売買価格は取り扱う商材のジャンルやリピーター顧客の有無、SNSとの連携などによっても異なるため、一概に上記の価格帯で取引されるわけではありません。あくまで一般的な相場価格だと捉えておくとよいでしょう。
ECサイトをM&Aするメリット
ECサイトのM&Aには、買い手側・売り手側双方にメリットがあります。ここからは、それぞれの立場に分けて解説していきしょう。
【買い手編】ECサイトをM&Aするメリット
まずは、買い手側のメリットを紹介します。
①購入後すぐに利益を上げられる
M&A最大の魅力は、すでに軌道に乗っているECサイトを購入できることです。「独自の商材を取り扱っている」、「複数のリピーターがついている」といったECサイトを選定すれば、購入後すぐに利益を上げることも難しくありません。
1からECサイトを立ち上げる場合、まずは顧客の獲得から始める必要があります。ECサイトに集客するマーケティングの戦略を立てたり、取り扱う商材に創意工夫を凝らしたりなど、トライ&エラーを繰り返しながら、ようやく収益を上げられるようになるものです。
しかし、M&Aによって引き継いだECサイトであれば、事業としての地盤はすでに固められているため、サイト立ち上げ時のステップを省略できるメリットがあります。
②在庫や取引先を引き継げる
ECサイトのM&Aでは、売り手によっては在庫も含めて売却されることがあります。買い手側は仕入れに手間暇をかける必要がないため、購入後すぐに事業をスタートすることが可能です。
また、M&Aでは既存の取引先を引き継げる点も大きなメリットです。EC事業では、まず商材の仕入れ先から選定する必要があります。競合事業者と被らず、独自性の高い商材を取り扱う仕入れ先を見つけるのは、そう簡単なことではありません。
その点、M&Aではすでに関係が構築された取引先をそのまま引き継げるため、仕入れ先の開拓を行うことなくEC事業を始められます。
③既存ビジネスとのシナジー効果が期待できる
ECサイトのM&Aは、既存ビジネスとのシナジー効果が期待できる点もメリットのひとつです。
自社製品を抱えている企業は、ECサイトを買収することで販売チャネルの拡大にもつながります。すでに顧客を抱えているECサイトであれば、一定のユーザーに自社商品をPRできるプラットフォームにもなります。
また、SNSとの連携も大きなポイントです。SNSと連携して多くのフォロワーを抱えているECサイトを選定することで、SNSでの発信力も同時に得られます。SNSからECサイトへの流入に成功すれば、新たな顧客層を獲得することも十分可能です。
【売り手編】ECサイトをM&Aするメリット
次に、売り手側のメリットを紹介していきましょう。
①まとまった資金を得られる
売り手側は、ECサイトを売却することでまとまった資金を得られます。その資金をもとに既存事業の拡大に充てることもできますし、新規事業の立ち上げに充てることも可能です。
場合によっては、想定していた金額より高値で売却できることもあるため、M&Aによって事業の展望の拡大にもつながります。
②本業へ注力できる
ECサイトをM&Aで手放すことによって、本業に注力できる点もメリットのひとつです。
ECサイトの運営は、在庫の管理や仕入れ、商品の発送、顧客からの問い合わせ対応など、多くの作業を同時に行わなければなりません。他に事業を抱えている場合は、「他の事業に割く時間がなくなりそうだ」と悩むこともあるでしょう。
M&AによってEC事業を切り離すことで、リソースにも余裕が空き、本業に集中しやすくなります。前述の通り、M&Aでまとまった資金も得られるため、その資金をもとに本業を拡大することも可能です。
③在庫も含めて売却できる
ECサイトの売却を検討するうえで、「在庫を無駄にしたくない」と考える人も多いでしょう。当然在庫の仕入れには多くの事業資金が充てられているため、「無駄にしたくない」と考えるのも無理はありません。
しかし、ECサイトのM&Aでは、抱えている在庫も含めて売却することができます。在庫も含めて売却する場合は、買い手と相談しながら売買価格を決められるため、仕入れにかけた事業資金が無駄になる心配もありません。
M&Aまでの流れ
ここからは、ECサイトのM&Aを行う際の手順について確認していきましょう。買い手・売り手別に解説していきます。
【買い手編】M&Aまでの流れ
M&A仲介業者を利用する場合、案件の相談から契約完了まで、およそ2ヶ月~3ヶ月で終えられます。
①M&A仲介業者へ相談・依頼 ②購入するECサイトの選定 ③売り手との面談 ④譲渡契約の締結 |
譲渡契約の締結後は、売り手と取り決めたスケジュールに沿って引継ぎが行われます。契約内容によっては、一定期間売り手からのフォローを受けることも可能です。
【売り手編】M&Aまでの流れ
売り手としてM&Aを行う場合も、仲介業者への依頼から契約締結まで2ヶ月~3ヶ月ほどで終えられます。
①M&A仲介業者へ依頼・相談 ②簡易価格査定 ③買い手との面談 ④譲渡契約の締結 |
仲介業者を利用した場合、買い手側との交渉や契約手続きをフォローしてもらえるため、初めてM&Aを行う場合でも安心して手続きを進められます。
【成約事例】ECサイトのM&A事例
ここからは、実際に行われたECサイトのM&Aの事例について紹介していきましょう。
①家具専門ECサイトの売却に成功
事業形態:法人(従業員3~5名) 譲渡形態:株式譲渡100%(株主3名) 【M&Aまでの経緯】 知人と会社を立ち上げ、家具のECサイトを営んでいたが、ベンチャー企業でできることに限界を感じ売却を決意。経営陣で相談した結果、会社そのものもM&Aで売却することとなった。 その後、M&A仲介業者へ依頼し、ネット系事業会社との事業統合に成功。 |
本ケースは、ECサイトだけでなく、会社そのものもM&Aで売却したケースです。M&A仲介業者へ依頼したことで、より良い条件のもと譲渡契約を締結することが可能となりました。
②アパレルのECサイト事業の売却に成功
事業形態:個人事業主 譲渡形態:事業譲渡 【M&Aまでの経緯】 アパレルのECサイトを長年運営していたが、別の新規事業立ち上げのため売却を決意。複数の買い手がついたおかげで、当初想定していた金額よりも高値での売却が実現。 M&Aで得た資金をもとに、新規事業の立ち上げに成功した。 |
ECサイトのM&Aは法人だけでなく、個人事業主でも可能です。本ケースでは、長年個人で営んでいたアパレルECサイトを売却されました。
多くのリピーターがついていたことや、懇意にしている取引先があったことから、高値での売却につながりました。
ECサイトのM&Aをプロに頼むべき理由
ECサイトのM&Aは個人間で直接取引することも可能ですが、安全に取引を進めるためにはM&Aの仲介業者を利用することがおすすめです。ここからは、M&Aの仲介業者を利用すべき理由について解説します。
①知識不足をフォローしてもらえる
ECサイトのM&Aでは、事業の譲渡に関する専門知識が必要となります。M&Aに不慣れな個人同士が取引を進めてしまうと、契約に不備があっても取り返しがつがないですし、話し合いや条件が合わずすぐに破談になりがちです。契約後に事業の引継ぎがスムーズに進まないこともあるでしょう。
その点、M&Aのプロに依頼をすれば、取引相手との粘り強い交渉や契約手続きをフォローしてもらえるため、初めてM&Aに取り組む人でも安心して取引が行えます。
②安心して取引を進められる
ECサイトのM&Aでは、金銭の授受が発生します。個人間での直接取引では「資金を振り込んだ後に連絡が途絶えた」といったトラブルも多く見られるようです。M&Aでは大きな資金が動くため、安心して取引を進められる仲介業者を利用することがおすすめです。仲介業者では譲渡対象物の引き渡しと代金決済もフォローしてくれるため、不要なトラブルに巻き込まれる心配がありません。
なお、サイトレードではこれまで2,000件以上のご相談、数百件に及ぶ仲介実績があります。ECサイトのM&Aを検討されている方は、ぜひお気軽にサイトレードへご相談ください。
まとめ
近年のECサイト市場の活況に比例して、EC業界ではM&Aが活発に行われています。ECサイトのM&Aは売り手・買い手双方にさまざまなメリットがあります。
それらのメリットをしっかりと享受するためには、安心して取引を進められる仲介業者を利用することがおすすめです。
ECサイトのM&Aを検討されている方は、どうぞお気軽にサイトレードまでご連絡ください。
執筆者: M&Aアドバイザー 和家 智也(わけ ともや)
株式会社ゼスタス 代表取締役/早稲田M&Aパートナーズ株式会社 代表取締役
一般社団法人日本サイトM&A協会 代表理事
筑波大学第三学群基礎工学類卒業。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修士課程修了(MBA)。2006年、サイトM&A専門仲介事業『サイトレード』を立ち上げる。2017年、第11回M&Aフォーラム賞 選考委員会特別賞を受賞。著書『M&Aエグジットで連続起業家(シリアルアントレプレナー)になる』