サイト売買コラム
- 売り手目線
売却体験!飲食店支援サイトの売却が拓いた未来
2024.12.04
取材協力者:森寛人さん(サイト売却者)
地域密着型サイトを手放す決断
私は地方都市に住む30代の個人事業主です。家族と穏やかな日々を過ごしながら、地元に貢献できる仕事がしたいと考え、立ち上げたのが『フードデリバリー情報をまとめたサイト』でした。当時、社会全体で飲食業界が困難な状況にあり、多くの店舗が営業縮小や休業を余儀なくされていました。地元の馴染みの飲食店が苦境に立たされているのを目の当たりにし、「何か支援できることはないか」と考えたのが、このサイトを始めるきっかけでした。
地元で利用可能なデリバリーサービスや各店舗のメニュー、配達エリア、クーポン情報を一目で分かるように掲載したサイトは、立ち上げ当初から多くの利用者に喜ばれました。特に「初めてデリバリーを使う人向けのガイド」が好評で、地域メディアにも取り上げられるなど、アクセス数は月間10万PVを超え、飲食店からも「おかげでデリバリー利用が増えた」と感謝の声をいただきました。しかし、飲食業界が通常営業を取り戻す中でデリバリー需要は次第に減少し、サイトの運営状況は大きく変わっていきました。
アクセス数の減少と運営の負担
私のサイトが最も注目を集めたのは、飲食業界が厳しい状況に置かれていた2020年から2021年にかけてのことでした。地元の飲食店を支援するために立ち上げたこのサイトは、デリバリー需要の高まりに応じて多くの住民に利用され、月間10万PVを超えるアクセスを記録しました。広告収益も順調で、飲食店オーナーから感謝されるなど、やりがいに溢れていました。しかし、その状況は業界全体が通常営業を再開し始めると同時に変化していきました。
飲食店の通常営業再開によりデリバリー需要が減少すると、サイトのアクセス数も落ち込み、2023年には月間3万PVを下回ることが増えました。広告収益もピーク時の半分以下に低下し、サーバー費用やツール利用料の負担が重く感じられるようになりました。
さらに、店舗情報を最新に保つための更新作業は多忙な飲食店オーナーとの連携が難航し、遅れが生じるたびにユーザーからの問い合わせやクレームが増える悪循環に陥りました。運営の全てを一人で担っていた私は、「これ以上一人では続けられない」と限界を感じるようになりましたが、愛着のあるサイトを手放す決断は簡単ではありませんでした。
サイト売却を決断した理由
私がサイトを手放す決断をしたのは、運営負担と収益低下という課題が大きな理由でした。運営当初は地域貢献を目的に、地元飲食店を支援し、住民に便利な情報を届けるという取り組みでした。多くの人に利用され、感謝されることは私にとって大きな自信と喜びでした。それだけに、このサイトには特別な愛着がありました。
しかし、社会全体でライフスタイルが大きく変わり、飲食業界が通常営業を取り戻すにつれて状況は一変しました。デリバリー需要が減少し、アクセス数や広告収益が右肩下がりになる一方で、情報更新や問い合わせ対応といった運営負担は減るどころか増えていきました。
そんな中で、地元特産品をオンラインで販売する新たな事業アイデアが思い浮かび取り組むことにしたのです。地域の魅力を発信し、持続可能な収益モデルを構築するというビジョンに日々ワクワクしていました。初めてサイト売却を考えたときには「本当に手放して良いのか」と不安が押し寄せましたが、自分の未来に進むため、得た経験を活かし、サイト売却を決断しました。
和家さんとの出会い
サイトを売却しようと決めたものの、具体的な進め方が分からず不安ばかりが募っていました。「サイトの価値はどのくらいあるのか?」「どんな買い手を探せばいいのか?」といった疑問が次々に浮かび、行動に移せずにいました。そんな中、YouTubeの動画でM&Aについて説明をしていた和家さんを発見しました。
YouTubeの動画で和家さんは、実際の事例を交えながらM&Aの可能性を分かりやすく説明しており、その誠実な語り口に引き込まれました。「この人なら信頼できる」と感じ、動画の概要欄にあるリンクから直接相談を申し込みました。
初めての面談(ZOOM)では、サイトを立ち上げた経緯や運営の課題、新たな事業への想いを全て話しました。和家さんは熱心に耳を傾け、「地域に根付いたデータを持つこのサイトは、地方市場を狙う企業にとって非常に魅力的です」と評価してくれました。この言葉に、私のサイトへの価値を改めて認識し、売却への不安が少し和らぎました。
和家さんは、売却プロセスについても具体的に説明してくれました。価格の評価基準や買い手選定、交渉の進め方などを一つずつ丁寧に教えてくれ、「一緒に進めていきましょう」と力強い言葉をかけてくれました。また、「地元の飲食店データを大切に活用してほしい」という私の希望にも寄り添い、それを実現できる買い手を探すと約束してくれたのです。
和家さんとの出会いは、サイト売却だけでなく、新事業への挑戦へとつながる大きな一歩となりました。彼の温かいサポートがなければ、私は前に進む勇気を持てなかったと思います。
買い手の登場と交渉
和家さんが買い手候補として紹介してくれたのは、全国規模で展開するフードデリバリー企業の地方支店でした。この企業は、地方市場の開拓を重要な戦略としており、私のサイトが持つ地域データや既存のユーザーベースに大きな魅力を感じているとのことでした。具体的には、私のサイトの情報を自社アプリに統合し、地方のターゲット層を迅速に獲得する計画を持っていました。
初めての買い手との面談では、企業の経営戦略の担当者さんが事業計画を丁寧に説明してくれました。「地元の飲食店情報をしっかり活用しながら、地域密着型のサービスを強化したい」という意向は、私の希望とも一致しており、同じ方向性と共通点が見えました。
交渉では、譲渡条件や価格だけでなく、サイトの今後の運営方針についても重点的に話し合いました。特に、地元飲食店との信頼関係を守るため、どのように情報を扱うかについては慎重に議論しました。担当者さんから「既存のデータはそのまま活用し、店舗とのつながりを維持する」と約束されたことで、安心して交渉を進めることができました。
最終的に、価格や条件についても双方が納得のいく形で合意。和家さんのサポートもあり、スムーズに契約締結へと至りました。この買収により、買い手は地方市場での事業拡大を、私は新事業への一歩を踏み出すための資金と時間を得ることができました。
契約締結と新たなスタート
契約書に押印をした瞬間、胸にこみ上げる複雑な感情を感じました。自分が一から立ち上げ、苦労を重ねて育ててきたサイトが手元を離れることへの寂しさは想像以上でした。「本当にこれで良かったのだろうか」という思いが一瞬頭をよぎりましたが、それと同時に、肩の荷が下りたような安堵感と、新たな挑戦への期待感も湧き上がってきました。
買い手企業の担当者さんから「サイトの価値を最大限活用し、地域に貢献するサービスを作りたい」と言われたとき、自分のサイトが形を変えながらも地元の役に立つことに誇りを感じました。
契約後、和家さんから「これが終わりではなく、新たなスタートです」と声をかけられたことで、未来への意欲がさらに高まりました。売却で得た資金と時間を使い、地域特産品をオンラインで販売する新事業の準備に全力で取り組む決意を固めました。
振り返れば、この売却は私にとって正しい選択だったと確信しています。大切なものを手放す勇気を持てたことで、新たな可能性が広げてくれたのです。
もし、サイト運営に限界を感じている方や新しい挑戦を考えている方がいれば、M&Aという選択肢を検討し、信頼できる専門家と出会うことで道が開けると伝えたいです。
M&A担当の和家からの見た譲渡に込めた想い
この取引では、売り手が地元飲食店を支援するために立ち上げたサイトと、買い手である全国規模のフードデリバリー企業の地方市場拡大というニーズを結びつけることが鍵となりました。売り手はサイトへの愛着や地域への強い想いを持ち、「地元飲食店との信頼関係を壊さないでほしい」という願いを抱いていました。この希望を尊重し、買い手に具体的な運営計画を示してもらい、安心感を与えることに努めました。また、交渉では双方が納得できる公平な条件を提案し、スムーズな話し合いを進めるよう配慮しました。最終的に、売り手の想いが買い手の計画に反映され、双方が新たなスタートを切れる結果を導けたことに大きなやりがいを感じました。
執筆者: M&Aアドバイザー 和家 智也(わけ ともや)
株式会社ゼスタス 代表取締役/早稲田M&Aパートナーズ株式会社 代表取締役
一般社団法人日本サイトM&A協会 代表理事
筑波大学第三学群基礎工学類卒業。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修士課程修了(MBA)。2006年、サイトM&A専門仲介事業『サイトレード』を立ち上げる。2017年、第11回M&Aフォーラム賞 選考委員会特別賞を受賞。著書『M&Aエグジットで連続起業家(シリアルアントレプレナー)になる』
関連記事
-
サイト売買は個人でもできる!よくある疑問点をQ&A形式で解説
執筆者: 和家 智也 近年、活発に取引が行われているサイト売買。中には、数千万円を超える価格で
2022.09.23
-
【2025年版】Instagramアカウントの売却相場とは?売買に影響するポイントも解説
執筆者:和家 智也 近年、活発に取引が行われているInstagram(インスタグラム)アカウン
2024.11.012024.11.01
-
ECサイト業界のM&A相場とは?メリットや事例も解説
執筆者:和家 智也 コロナ禍の巣ごもり消費の増加や、キャッシュレス決済の普及によって盛り上がり
2023.02.03