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M&Aは個人でも可能!起業との違い、メリット・デメリットは?

この記事のポイント

M&Aは個人でも取引することが可能!起業や事業拡大の手段として活用する人が増加中!

執筆者:和家 智也

後継者不足や経営者の高齢化によって活発化しているM&A。上場会社が中小企業・ベンチャー企業を買収するM&Aもあれば、上場企業が上場企業を買収するTOB(株式公開買付)という手法のM&Aもあります。

M&Aと聞くと企業間の取引のようなイメージがありますが、実は個人で行うことも可能です。本記事では、個人によるM&Aのメリット・デメリットや起業との違いについて解説します。

個人M&Aとは?

個人M&Aとは、個人が買い手となった企業の買収を行うことです。

M&Aと聞くと、数億円・数兆円で取引されるような規模を想像するかもしれません。しかし、中には小規模で行われるM&Aもあり、個人が買い手となることも珍しくありません。特に最近では、Webサイトを対象としたM&Aが注目されており、活発に売買が行われています。

個人M&Aが増えた理由

近年、個人によるM&Aが増えた背景には、次のような要因が挙げられます。

・後継者不足で会社売却をしたい経営者が増加している
・小規模M&Aを扱う仲介業者が増えた
・SNS等の普及で個人でも活躍できる場ができた

それぞれくわしく解説していきましょう。

1.後継者不足で会社売却をしたい経営者が増加している

少子高齢化による働き手不足が深刻化している日本では、後継者探しに苦労している企業も少なくありません。後継者不足の解消は、親族への事業承継やIPOなどさまざまな方法がありますが、M&Aもそのひとつです。

特に、最近では個人事業主がM&Aによって後継者を探すケースも増えており、個人の買い手がつくことも多くあります。

2.小規模M&Aを扱う仲介業者が増えた

M&A業界には「日本M&Aセンター」や「M&Aキャピタルパートナーズ」のような大手仲介業者が存在しますが、近年は個人が買い手となるような小規模案件を取り扱う仲介業者も増加しています。

こうした小規模のM&A仲介業者では、大手が取り扱わないような案件を多く保有しており、個人でM&Aを検討している人にとってはニーズが合致することが大きな魅力です。

3.SNS等の普及で個人でも活躍できる場ができた

個人M&Aは企業の売買だけではなく、SNSのアカウントが売買の対象となることもあります。

最近では、SNSの運用によって生計を立てている人も珍しくありません。しかし、1からアカウントを立ち上げて収益化を目指すとなると、フォロワー集めやコンテンツの充実に多大なリソースを割かなければなりません。

そこで、個人M&Aではすでに収益化に成功しているアカウントの売買が行われており、「効率よく収益化を目指したい」という人から大きな注目を集めています。

個人M&Aのメリットとデメリット

個人M&Aに取り組む際は、そのメリット・デメリットについてよく理解しておくことが大切です。それぞれくわしく紹介していきましょう。

1.個人M&Aのメリット

個人M&Aのメリットには、主に次の3つが挙げられます。

・事業を1から立ち上げる必要がない

事業の立ち上げは、事業理念の策定や市場調査、事業計画の立案など多くのプロセスを経なければなりません。しかし、個人M&Aでは、すでに営まれている事業を承継するため、事業の立ち上げにかかるコストやリソースを削減できるメリットがあります。

・経営のノウハウの共有を受けられる

1から事業を立ち上げる場合、さまざまな試行錯誤をしながら経営のノウハウを身につけていきます。中には大きな失敗によって、損失を被ることもあるでしょう。

しかし、個人M&Aでは、すでにその業界で積み上げられた経営ノウハウを売り手側から共有してもらえるメリットがあります。

・不労所得になりえる

個人M&Aは、不労所得につながることもあります。たとえば、収益化に成功しているWebサイトを買収すれば、毎月広告収入を得ることも可能です。

もちろん収益を継続するための取り組みは必要ですが、収入アップを目指す人にとっては嬉しいメリットといえます。

2.個人M&Aのデメリット

一方、個人M&Aにはデメリットも存在します。

・初期費用がかかる

個人M&Aは小規模ではあるものの、買収のための初期費用が必要です。費用ゼロで取り組むことはできませんので、きちんと事前に資金を準備しておきましょう。

・リスクを背負う可能性もある

M&Aでは収益などの良い面だけではなく、事業が抱えるリスクについても目を向けることが大切です。買収したものの、「負債の返済負担が大きく、全く収益が上げられない」ということにならないように、しっかり財務諸表の確認を行いましょう。

・軌道に乗せられるかは自分次第

小規模で取引されるM&Aの中には、売上や収益が少ない事業も少なくありません。業績が芳しくない事業を買収する際、そこから軌道に乗せられるかは自分の経営手腕次第です。将来の展望なしに引き継ぐのではなく、事前にきちんと事業計画の見通しを立てておきましょう。

個人M&Aと起業の違いとは

個人が事業に取り組む際は「起業」の選択肢もありますが、個人M&Aとどのような点が異なるのでしょうか。それぞれ確認していきましょう。

1.既に認知が得られている可能性がある

個人M&Aでは、すでに顧客や取引先を抱えた状態で事業をスタートできます。一方、自ら起業する際は、何もない状態から顧客や取引先の獲得に取り組まなければなりません。

すでに業界で認知された状態で事業をスタートできるのは、買い手にとって大きなメリットです。

2.黒字であれば収益がすぐに上がる

個人M&Aで買収する事業が黒字決算であれば、引き継ぎ後すぐに収益が上げられます。もし1から起業する場合は、「最初の数年は赤字続き」ということも珍しくありません。

事業引継ぎからすぐに収益を得られるのは、買い手にとっても安心できるポイントです。

3.購入できる案件を探す必要がある

個人M&Aは近年活発に取引が行われており、仲介業者も豊富な案件を抱えています。その中から、買収先を探すのは簡単な作業ではないでしょう。いざ事業を引き継ぐとなると、「本当に大丈夫だろうか」と不安になるものです。

しかし、仲介業者ではニーズに合う案件を発掘して紹介してくれるため、過度に心配する必要はありません。

4.体制が整った状態で始められる

個人M&Aでは、すでに事業の体制が整った状態で引き継げることが特徴です。一方、起業する場合は、何もない状態から業務の取り組み方を模索していかなければなりません。

個人M&Aでは確立された業務フローのもと業務に取り組めるため、初めてM&Aを行う人でも安心して引き継ぐことができます。

個人M&Aを行う方法

個人M&Aに取り組む際は、いくつかの方法があります。それぞれの特徴を紹介していきましょう。

1.M&A仲介会社を利用する

M&Aでは、仲介業者を通じて事業承継が行われることが一般的です。

たとえば、早稲田M&Aパートナーズでは豊富な仲介実績を持っており、買い手・売り手にとって最適なプランを提案しています。取引が完了するまで専門スタッフがサポートしてくれるため、不明点や疑問点を解消しながら取引を進めることが可能です。

2.会社売却のマッチングサイトを利用する

個人M&Aには、売り手と買い手をつなぐプラットフォームを提供するマッチングサイトもあります。しかし、マッチングサイトでは仲介業者のようなサポートは受けられないため、先方との交渉や契約手続きを自ら行わなければなりません。

3.金融機関や公的機関に相談する

個人M&Aは、事業引継ぎ支援センターや金融機関へ相談することも可能です。銀行や信用金庫などではM&Aの専門部署を設けているところもあるため、豊富な経験を持つ人に相談できる安心感があります。

4.知り合いやツテで探す

小規模の個人M&Aであれば、知り合いやツテで売り手を探すケースもあります。ただし、M&Aは金銭のやり取りが発生する取引ですので、たとえ知り合いであっても仲介業者を挟む方が安心です。

個人M&Aの流れとは

個人M&Aは、主に次の流れに沿って行われます。

1.仲介業者への相談、希望条件の提示
2.案件の紹介
3.売り手との面談
4.デューデリジェンス
5.契約締結
6.事業継承

M&Aは、売り手から事業を引き継ぐ大切な取引です。面談時に懸念点や疑問点がある場合は、どんなことでも尋ねるようにしましょう。

まとめ

近年、活発に行われているM&Aは個人でも取り組むことが可能です。中には小規模の案件もありますので、起業や事業拡大を検討している人はぜひM&Aによる事業承継を検討してみましょう。

執筆著者 和家智也(わけともや)

執筆者: M&Aアドバイザー 和家 智也(わけ ともや)
株式会社ゼスタス 代表取締役/早稲田M&Aパートナーズ株式会社 代表取締役
一般社団法人日本サイトM&A協会 代表理事

筑波大学第三学群基礎工学類卒業。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修士課程修了(MBA)。2006年、サイトM&A専門仲介事業『サイトレード』を立ち上げる。2017年、第11回M&Aフォーラム賞 選考委員会特別賞を受賞。著書『M&Aエグジットで連続起業家(シリアルアントレプレナー)になる