サイト売買コラム
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【成功事例紹介】EC・ネットショップの売却の相場価格や注意点とは?よくある質問をQ&A形式で紹介!
この記事のポイント
EC・ネットショップは価値のある資産として売買されている!想いを継いでくれる買い手へバトンタッチ
2022.09.19
執筆者: 和家 智也
近年のEC市場拡大の流れを受けて、EC・ネットショップの売買も活発に行われるようになりました。中には高額で売買が成立する例もみられることから、売却をゴールに設定しているサイト運営者も多くいます。本記事では、EC・ネットショップの売却の相場価格や注意点について解説してきます。
Contents
EC・ネットショップ売却の概要
コロナ禍の巣ごもり消費で注目を集めたことを背景に、EC・ネットショップ業界はさらに市場規模を拡大しています。EC・ネットショップは参入障壁が低いことから、多くの事業者が新規参入を行っています。しかし、独自性のある商材を取り揃えるのに苦労をしたり、顧客獲得がうまくいかなかったりと、安定した収益を上げるまでに時間を要していることも事実です。
そこで現在、「既に運営されているEC・ネットショップを購入したい」というサイト売買の需要が高まっています。購入希望者が多い売り手市場であることから、中には高額で売買が成立するケースも珍しくありません。
EC・ネットショップ売却の相場価格とは
EC・ネットショップ市場では買い手の需要が高まりを見せていることから、取引の相場価格も上昇しています。
一般的なEC・ネットショップ売却の相場価格は、「月間営業利益の1~3年分」といわれています。例えば、月間営業利益が50万円のEC・ネットショップであれば、600万~1,800万円の価格帯で売買される計算です。
ただし、EC・ネットショップでは月間の営業利益だけでなく、扱っている商材や固定ユーザーの存在、SNSとの連携なども売買の判断材料になります。「取り扱う商材の独自性が高い」などの付加価値が高いサイトは、さらに高値で売却することも十分可能です。
EC・ネットショップを売却する理由
EC・ネットショップの運営者は、どのような背景から売却を検討するのでしょうか。主な理由として、次の6つが挙げられます。
・新規事業へシフトチェンジするため
・まとまった資金を得られるため
・売却オファーを受けたため
・知り合いがEC・ネットショップ売却をしたため
・サイト運営のリソースが不足しているため
・在庫を含めて売却できるため
それぞれ詳しく解説していきましょう。
(1)新規事業へシフトチェンジするため
EC・ネットショップを売却する理由として、新規事業の立ち上げが挙げられます。既存サイトを売却するとリソースに余裕ができるだけでなく、売却金額を新規事業へ充てることも可能です。
独自性のあるEC・ネットショップであれば高値で売却することもできるため、新規事業に必要な資金をサイト売買で調達する例も珍しくありません。
(2)まとまった資金を得られるため
EC・ネットショップの売却によって、売り手側はまとまった資金が得られます。どれくらいの価格で売却できるかは、サイトのジャンルやユーザー数、商材などによって異なりますが、買い手の需要が増加しているEC市場では高値で取引される例も多くあります。
まとまった資金を得た売り手は、セミリタイアをしたり、新たな事業にチャレンジしたりと、豊富な選択肢の中から次のステップを選ぶことが可能です。
(3)売却オファーを受けたため
買い手の需要が高まっているECサイトでは、買い手側から売却のオファーを受けることもあります。それまで売却を視野に入れてこなかった運営者でも、オファーをきっかけに具体的な売却の検討を始めます。
ただし、直接買い手側からオファーを受けた場合でも、当事者同士での個人的な取引は避けることがおすすめです。安心して取引を進めるためにも、信頼できる仲介業者を利用しましょう。この点は、記事内で詳しく後述していますので、そちらも併せて参考にしてください。
(4)知り合いがEC・ネットショップ売却をしたため
友人や知人など身近な人がEC・ネットショップを売却したことによって、自身も売却を検討することがあります。これまでサイトを売却できることを知らなかった人や、知っていても自分とは関係がないと思っていた人などが、身近な成功例を耳にすることで興味を持つケースです。
具体的な手続きの流れや売却金額を実体験として聞くことで、「自分のサイトも売却できるだろうか」と取り組み始める人も多く見られます。
(5)サイト運営のリソースが不足しているため
EC・ネットショップは、運営者のリソース不足で売却する例もあります。EC・ネットショップの運営は、商品の仕入れや発送業務、顧客からの問い合わせ対応など、日々の業務にかなりのリソースを要することが特徴です。
そのため、サイトの規模が大きくなるほど、「サイト運営の人手が足りない」と感じることも珍しくありません。「サイトの成長性は十分にあるけど、自分のリソースでは対応できない」という場合は、より運営に手をかけられる後継者に譲り渡すこともひとつの選択です。
(6)在庫を含めて売却できるため
EC・ネットショップの売買では、現在抱えている在庫を含めて売却することが可能です。EC・ネットショップを運営する中で、「在庫管理が一番苦労した」という人も多いでしょう。過剰在庫を抱えないだけでなく、欠品を起こさないように在庫管理を行うことは簡単なことではありません。
サイト売買では在庫を含めて売却することで、そうしたビジネスの不安から解放されるメリットがあります。
EC・ネットショップを高く売却するコツ
EC・ネットショップを高値で売却するためには、いくつかのコツがあります。
例えば、アクセス数や会員数を増やすこともそのひとつです。既に一定の固定顧客がついているEC・ネットショップは、買い手にとって大きな魅力になります。
また、売却のタイミングも重要なポイントです。「事業が上手くいっているときに手放すのはもったいない」と感じるかもしれませんが、事業が軌道に乗っている時ほど高値で売却できる可能性が高いため、思い切って売却の決断をすることも大切です。
【より詳しいEC・ネットショップを高く売却するコツはこちら】
EC・ネットショップ売却事例
(事例1)寝具専門EC・ネットショップを売却:売却資金を手にして新規事業を開始
<譲渡経緯・理由>
寝具(ベッド・マットレス)専門のECサイトを立ち上げ、試行錯誤を繰り返しながら大手が参入しづらいニッチな商品で勝負をしました。ネットショップを訪問したお客さんに「商品の価値が伝わる売り場作り」を一番に心がけることで売り上げが徐々に伸びてきました。広告をかけずに検索エンジンで上位表示され、転換率も良くなってきたころ、同時並行で進めていた新規事業が多忙になったため、マンパワーと資金を集中させるため通販事業売却を決断しました。
<譲渡成約後・現在>
サイト売買は初めての経験ではありませんでしたが、高額な案件になるため譲渡手続きはサイトレードの仲介アドバイザーにすべてお任せしました。譲渡交渉はデリケートな話になることが多いので、間に入っていただける経験豊富なアドバイザーがいることで、心理的にも負担感なく交渉を進めることができました。興味を示してくれた数社と面談をした結果、子供のように大切に育ててきたネットショップをしっかり引き継いでくれる同業の大きな会社さんに譲渡することを決めました。通常業務を行いながらの譲渡交渉だったため、サイトレード担当者さんがこまめに連絡をくれたことがありがたかったです。現在では無事に引き継ぎも終わり、お陰で新規事業に軸足を移すことができています。
(事例2)子供服EC・ネットショップを売却:体調を崩したため売却。ゆっくり休養し回復
<譲渡経緯・理由>
韓国から輸入したかわいい子供服のネットショップを運営していました。コンセプトはナチュラル系テイストで、Instagramを使って新商品の写真を毎日投稿することで固定ファンができていました。ネットショップから注文を受けたら韓国で仕入れ出荷して、日本の注文者へ届けるドロップシッピングの無在庫ビジネスモデルでした。ただ、私の持病が悪化して体調を崩してしまったため、毎日仕入れや出荷をする体力がなくなってしまい、ネットショップを休業するか売却するかの選択を迫られていました。熟考の結果、ショップのコンセプトと大切なお客さんへの想いを引き継いでくれる方に売却する決断をしました。
<譲渡成約後・現在>
サイト売買は初めてでしたが、サイトレードの仲介アドバイザーに相談し、資料作成から売却金額の設定、買い手候補との交渉まですべてお任せしました。LINEを使って買い手の方とリモートで何度も打ち合わせをしました。そのうち、韓国と貿易を行っている会社で、アパレル商品の取り扱いに理解がある方に譲渡することにしました。ちょうど子育てをされていて、私のECサイトをとても気に入っていただいたこともあり、安心して引き継ぎをお任せすることができました。現在は、しっかり休養をとって体調を回復させることができ、事業売却資金をもとに今は新たな商材で貿易業を始めています。
EC・ネットショップ売却でよくある質問
初めてのEC・ネットショップの売却に不安があるのも当然です。
そこで、よくある質問をQ&A形式でまとめましたので、売却検討の参考にしてみてはいかがでしょうか。
(Q1)社員やスタッフの転籍は必要なのか?
(A1)ケースバイケースです。買い手に人材がおらずスタッフを含めて譲受が条件とすれば転籍が必要になります。売り手がスタッフを手放したくない(転籍させたくない)場合、一定の期間を設けて買い手側のスタッフに運営ノウハウを引き継ぎすることもあります。
(Q2)在庫まで買い取ってもらうことは可能か?
(A2)在庫も事業資産の一部になりますので合わせて譲渡できます。ただし回転していない商品や過剰在庫は買い取ってもらえない場合がありますのでご注意ください。
(Q3)ショッピングモール内のEC・ネットショップの売却は可能か?
(A3)ショッピングモール(楽天市場、Yahoo!ショッピング、PayPayモールなど)の売買や名義変更はできません。ただ、一部のショッピングモールでは、モール側の許可を得ることで名義変更ができる場合があります。詳細は出店中のショッピングモールにお問い合わせください。
(Q4)仕入元への告知タイミングや必要性を知りたい
(A4)基本的にはサイト売買の譲渡契約書の締結後になります。取引先の引継ぎは非常に重要な資産ですので、買い手と協議の上で慎重に決めてください。
(Q4)売却後のアフターフォローの期間は?
(A4)ECサイトの売上規模とスタッフ数により大きく変わります。一般的には数か月に設定する場合が多いです。
EC・ネットショップの売却時に注意すべきポイント
EC・ネットショップを売却するときには、次の3点に注意しましょう。
・サイトの情報は正確に伝える
・適正価格で売却に出す
・信頼できる仲介業者を利用する
それぞれ詳しく解説します。
(1)サイトの情報は正確に伝える
サイト売買では、買い手側に様々な情報を開示します。その際に「大体の数字でいいか」と曖昧な情報を伝えてしまうと、後々トラブルになりかねません。
特に、重要な判断事項となるサイトの月間利益や月間経費は正確に申告しましょう。
(2)適正価格で売却に出す
EC・ネットショップを売却するときは、適正価格で売りに出すことが大切です。例えば相場よりも高い価格で設定してしまうと、長期間買い手が付かないことがあります。スムーズに売買を進めるためには、必ず適正価格で売りに出しましょう。
サイトレードでは、無料でサイト査定のサービスが利用できます。月間PV数や月間売上などの情報を入力するだけで簡単に査定結果が提示されるため、ぜひ自社サイトの適正価格の把握にお役立てください。
(3)信頼できる仲介業者を利用する
EC・ネットショップの売却では、信頼できる仲介業者を利用することが大切です。サイト売買の取引は個人間でも行えますが、金銭の受け渡しや契約内容を巡ってのトラブルが絶えません。安心して取引を行うためには、豊富な実績を持つ仲介業者を利用しましょう。
まとめ
EC市場の拡大を受けて、EC・ネットショップは売買の需要が高まっています。中には高値で取引が成立するケースもあり、相場価格以上の売却代金を得る売り手も多く見られます。
ただし、大きな金額のやり取りを伴うEC・ネットショップの売買は、必ず仲介業者を利用することが大切です。これまで大切に運営してきたサイトを安全に譲り渡すためにも、信頼できる仲介業者のもとで取引を進めましょう。
執筆者: M&Aアドバイザー 和家 智也(わけ ともや)
株式会社ゼスタス 代表取締役/早稲田M&Aパートナーズ株式会社 代表取締役
一般社団法人日本サイトM&A協会 代表理事
筑波大学第三学群基礎工学類卒業。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修士課程修了(MBA)。2006年、サイトM&A専門仲介事業『サイトレード』を立ち上げる。2017年、第11回M&Aフォーラム賞 選考委員会特別賞を受賞。著書『M&Aエグジットで連続起業家(シリアルアントレプレナー)になる』